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最高裁判所第二小法廷 昭和23年(オ)49号 判決 1949年2月01日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告理由第三点について。

上告人が原審において疏明方法として提出した乙第一二号証および第一三号証は、いずれも、本件仮処分申請提起の後に、被上告人自ら、上告会社に宛てゝ本件係争の事実関係について、差出した書面(内容証明郵便)であることは所論のとおりである。しかしながら、訴訟提起後に、当事者自身が、係争事実に関して作成した文書であつても、それがために、当然に、証拠能力をもたぬものではない。裁判所は自由の心証をもつて、かかる書類の形式的、実質的証拠力を判断して、これを事実認定の資料とすることができるのである。本件において、右書証の成立については、当事者間に争いのないところであり、原審はその自由裁量によつて、右書証の証拠価値を判断した上で、その挙示する他の疏明方法と綜合して判示のごとき事実関係疏明の資料に供したのであつて、この点において、少しも、所論のごとき違法はないのである。その余の論旨は要するに原審の専権に属する疏明方法の取捨、判断、事実の認定に対する非難であつて、これを採用することはできない。(その他の判決理由は省略する。)

以上のごとく本件上告はその理由がないから民事訴訟法第四百一条第九十五条第八十九条を適用して主文のごとく判決する。

右は全裁判官一致の意見である。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山茂 裁判官 藤田八郎)

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